まなび場ブログ

若い人たちとの対話

率直に話す

 「なんで不登校になったの?いじめられたの?」新しくまなび場に入ってきた初対面の子どもに、ずけずけと聞く子がいた。それは答えにくいことかもしれない、こんな配慮のない聞き方をして大丈夫か、僕は一瞬ひやりとした。でも、聞かれた子はいじめられた体験を語りはじめ、子どもたちは共感を持って聞いていた。

 ためらいなく素朴に聞かれたから、自然にスッと答えが出たという雰囲気だった。僕たち大人はいろいろ考えてしまうから、なかなかこんな風には聞けない。

 

 こんなこともあった。「死にたい気持ちしかない」という若者に対して、別の若者が「本当に死にたいんだったら、もう死んでいると思う。何十階建てのビルの屋上から飛び降りるとか」と言う。言われた方は初め「私の気持ちがあなたに分かる訳ない」と反発したが、話し合っていくうちに、自分の奥底には生きていたいという心の動きもあることに少し気づいた様子だった。

 きわどさもあるが、死にたいという気持ちを抱えてきた者同士だからこそ、言い合えたことなのではないか。

 

 近い年代や立場だから通じ合うものもある。どこまで本音でしゃべれるかは、自分と相手との関係のあり方によって違ってくる。とはいえ、率直に言った言葉はまっすぐ相手に伝わるというのは、どんな人間関係においてもいえることだ。こちらが構えず無防備であることで、言われた相手も自分を守る必要を感じることなく受け止めることができるのだと思う。

 

 もちろん、率直であれば必ず通じあえるというわけではない。あるとき、過去に人からひどい仕打ちを受けたと訴える子に対して、「あんたの態度には問題はなかったのか?」と聞いた子がいる。聞いた子自身、過去に人間関係のトラブルがあったのだが、自分の態度にも問題があったという思いも持っていたのである。こう聞かれた子は黙りこみ、以後まなび場に来なくなってしまった。自分の態度を非難されたと受け止めてしまったのだろう(この件については、僕のフォローが不十分だったという反省がある)。

 

 率直に言うと相手との関係にギクシャクしたものが生じるかもしれない、そう感じて自分の本当の気持ちを言いだせないことは誰にでもあると思う。でも、言えずにいると、自分の頭の中だけで相手のことを批判的に考えて、相手との距離は開いていく。自分が率直に言えると、相手の言い分も素直に聞ける気持ちになり、結果的には自分の感じ方が少し相手寄りに修正されたりもする。率直に言うことで、関係は悪くなることよりも良くなることの方が多いだろう。

 相手のことをよく分かるためにも、できる限り率直な態度を心がけたい。