まなび場ブログ

若い人たちとの対話

気持ちが分かる

 「人に気持ちが通じないって感じることある?」と若者達に聞いてみた。
すると、彼等の間でこんな会話になった。
「そもそも、気持ちが通じるってどういう感覚なの?」
「自分が笑ったら相手も笑うとか、そういうことじゃないの?」
「相手が自分と同じ気持ちになるってこと?」
「自分の気持ちを分かってもらえるってことじゃないの?」

 

 “同じ気持ちになる”と“気持ちが分かる”。この二つは、どう違うんだろうか。

 小さい子どもにとって、自分が嬉しいと親も嬉しそうな表情を見せてくれるといった体験はとても大切だ。自分の気持ちの影響を受けて、相手にも自然に同じような気持ちが湧くことで、人とのつながりが実感できる。

 一方、若者が大人に対して「気持ちを分かってくれない」とか「気持ちが通じない」などという時、大人が自分と同じ気持ちでないことに不満を持っているわけではないだろう。自分とは違う気持ちを持つ大人に、自分の気持ちも分かって欲しいのだ。

 

 つらい体験を話したとき、聞き手にも似たようなつらい体験があると、互いに同じ気持ちを共有できる感覚が持てる。言葉で伝える必要すらない時もあるだろう。生活環境が似ている家族あるいは同級生などの間でも、同じ気持ちは湧きやすい。そういう人達と一緒にいると、安心感も得られる。

 でも、人はみな異なる。似たような気持ちを持っているとしても、全く同じ気持ちではないだろう。自分自身の体験にひきつけて分かったつもりになってしまうと、自分と相手との気持ちの違いに鈍感になることはないだろうか。

 

  先日テレビを見ていると、ある男性社員が「上司が男性だったらノリで通じるところが、女性上司なので難しい」と話していた。相手が自分と同じ気持ちではないから、コミュニケーションが取りにくいというのだ。でも、ノリだけでは通じない人の方が、分かったつもりにならずにきちんと話し合うことができるのではないか。

 仲間内でグループを作って、自分達は同じ気持ちのつもりになっていても、本当は気持ちがずれているということはないだろうか。

 

 実際には、人と同じ気持ちにはなれないことが多いし、人がなぜそう感じるのか理解しにくいこともある。でも、相手がどんな気持ちなのかに関心を持って聞いていくと、どこかで、自分にも似た感情があると思い当たることもある。これが、気持ちが分かるということなのかもしれない。