まなび場ブログ

若い人たちとの対話

「今のままでいいって思わないと、変わらない」

 「まなび場(私塾・フリースクールの中で自己中心的に振る舞う子がいて、周りの子達から注意されると逆に怒り出す。そんなことが続いた時、「あの子は、今のままでもいいってみんなが思わないと、変わらんわ」とつぶやいた若者がいた。聞いた瞬間、これは凄いことを言うなあ、と僕は思った。

 この言葉は、この若者自身の体験から出てきたものだろう。彼も人間関係が不器用だった。そのことで、いつも周りから責められる。こんな自分は嫌だと自分でも思う。変われない自分を自分自身が責めているのに、追い打ちをかけて責められては行き場がない。そんな風に感じていたのではないだろうか。

 

  “困った子ではなく、困っている子”という言葉がある。困った子だと思うと腹も立つ。こちらが腹を立てていると、相手は反発したり、逆に、自分自身を責めて身動きが取れなくなることもある。けれど、うまくやれないで一番困っているのは相手なのだと気づくと、こちらの腹を立てる気持ちは変化する。その時、相手の気持ちにも変化が生じる。

 多くの場合、外から見ているだけでは本人が困っているとは思えない。ある時、学校に行かずに1日中ゲームに熱中している子がいた。「ゲームがそんなに楽しいの?」と僕が聞くと、「ゲームをしている時だけ辛いことが忘れられる」と言う。自分で処理できないほど困っていたのだ。こういうことはよくよく話し合わないと、わからない。

 僕達が人に変わって欲しいと思うとき、そこには、“相手のためを思う気持ち”と“自分が嫌だという気持ち”の両方が混じっていることがある。相手のことがよくわからないと、自分が我慢できない気持ちが勝ってしまう。相手の困難な状況がわかったり、相手の良さが見えたりすると、“今のままでもいいかも”という気持ちがわく。それは、変わって欲しいという気持ちを無理やり封印しているわけではない。今はこうするしか仕方ないという事実を受け入れることと、変わっていって欲しいと思うこととは、ちゃんと両立する。

 

 冒頭の若者は、初めは相手の態度に我慢ができず、怒りの感情を出していた。でも、その子がみんなから批判されるのを見て、ふっと相手の苦しい立場に思いが至ったのだろう。このような若者達とかかわる中で、この後、自己中心的に振る舞っていた子も態度を変化させていった。責められるのではなく受け止められることで、自分を見つめ直すゆとりが生まれたのだと思う。